病院の地味なお仕事

田舎で内科医やってます。専門は消化器です。このブログは病院のいろいろな仕事にかんするフィクション小説です。登場人物は継続しますが、基本的に一話完結にしています。

それ、なかったことに

ざっくりとした概要説明:ある病院を舞台とした医師やコメディカル、病院にかかわる人たちのフィクション小説です。基本、ジャンルはコメディです。下ネタありです。    主な登場人物:   内科医師 小松原優子 34歳独身 かわいいがキレやすい          内科医師 柳原洋一  35歳独身 イケメンだが変態 ドM          内科医師 内田祐樹  26歳独身 ずんぐりむっくりの後期研修医  応援クリックがとても励みになっています。良かったら読む前にクリックお願いします  ⇒にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ 

 

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人間ドックを回る柳原は、生理検査室の前に立っていた。

 臨床検査技師、細井静は小さな声で「柳原先生、どうぞ」と検査室に招き入れた。

細井「まずは心電図からです。先生、胸を出してください」

柳原「静ちゃん、よろしくね。」たいして親しくもないのに、自分をちゃんづけで呼ぶ

柳原に心の中では嫌悪感を感じる細井であったが、そこはぐっとこらえるのであった。

細井「では、ちょっとヒヤッとしますよ。胸ちょっとさわりますね」

柳原「はいはい、どんどん触って」

細井は慣れた手つきで肋骨に指を触れ、位置を確認しながら心電図を体に装着して

いった。

細井「記録始めます‥‥」しばらくの間沈黙である。検査中はしゃべってはいけない。

それは柳原も心得ており、しばらく待ったのであるが、細井は心電図をずっと眺めてい

る。考え込む細井に柳原が言った。

柳原「PVC(心室性期外収縮)?」

細井「結構でてるんですよね…ポンポンと。」

柳原「俺、自分で自覚あるんだよね…結構でてるのわかってる」心室性期外収縮はよく

ある所見で時々出る分には心配のないものである。

柳原「それ…、なかったことにしてくんない?」

細井「え?」

柳原「だから、PVC出てないところを記録しておいてよ」

細井「え…でも、先生、結構出てますよ」

柳原「うん、だから、PVCとPVCの間を記録してほしいんだよね。昨年はそうしてもら

 ったんだよ」

細井「…わかりました。ちょっとやってみます」

しばし、沈黙が続き、まだ細井が口を開いた。

細井「先生、PVCがかなり頻発してて、記録する時間って結構あるので、どうしても次

のPVCが心電図上に記録されちゃいますよ」

柳原「俺、成績表みたいに人間ドックの結果もオールAみたいにしたいんだよ。ちょっ

と、内科の健康なデブの内田を呼ぶから、待ってて」

細井「替え玉はだめです」

柳原「内田はラーメンは必ず替え玉を頼むけどね、やっぱり駄目?」

細井「だめです」

柳原「じゃあ、静ちゃん、その心電図の自動コメント欄のPVCを修正液で治しておい

て」

細井「そんな原始的な方法で修正したら、検診センターの先生に怒られます」

柳原「じゃあ、今年のドックの結果異常ありになっちゃうじゃん」

細井「なってください」

柳原「厳しいなー。わかったよ、じゃあ、次は呼吸機能検査かい?」

細井「今年はコロナで呼吸機能検査は全例中止しています」

柳原「何だよ、今年は静ちゃんの呼吸機能検査受けられないのかよ、俺、楽しみにして

 たのにー」

細井の呼吸機能検査は、物静かな細井が検査になると豹変することが院内中でよく知ら

れているのである。「はーい、吸って吸って吸って―、もっともっと大きく大きく吸っ

ちゃってー、それからさらに吸って吸って吸ってー」から始まり、「ハイ、そこでふう

ーーーーーーーっつ、吐き切ったと思ってもそこからさらにふうーーーーーーーっつ、

更におまけにふうーーーーーっつ」と検査室からいつも細井の太い声で叫ぶ声が聞こえ

るのはもはやこの病院ではお馴染みなことなのである。廊下でその声を聴く者は「今日

も細井さん、太井さんになってるねー」と言いながらそこを通り過ぎるのである。

その呼吸機能検査ではまじめな検診受診者は失神するものが続出すると言われている

が、柳原は今年もそのドSな呼吸機能検査を楽しみにしていたが、コロナ禍の影響が病

院の生理検査室にも押し寄せていたのであった。

 

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